あしたやろうはばかやろう

私の心よ、無限に深くなれ

聲の形を観てきた

久しぶりのブログ更新。
仕事の大きな山がひと段落したご褒美として
1人映画に行くことにした。

選んだのは「聲の形」(こえのかたち)。
私が愛してやまない
京都アニメーションが製作を手掛けている。

君の名は。」がかなり話題を呼んでいて、映画館もだいぶフューチャーしているが、私は同じアニメというジャンルで言えば「聲の形」の方が関心が高かった。



※ここからは話の内容に触れるため、ネタバレを気にせず読める方だけ進んでください。




今回作品を見るにあたって、あえて予備知識を入れなかった。というか入れる余裕がなかった。
これは初めての試みだったが、結果としてかなり正解だったと思う。


小学生時代の将也を松岡茉優ちゃんが演じていることをすっかり忘れていた。
そして違和感なく見終わっていた。

そこがすごいと思う。



予備知識を入れていたらきっと演技の端々で松岡茉優ちゃんを感じ取ってしまったかもしれないと思うと、とても大切な1回きりの鑑賞だったことを思い知らされる。


そして、西宮硝子の演技。
演じたはやみんの振り幅に今更ながら感動している。

私の中ではやみんは「ご注文はうさぎですか?」シリーズの青山さん、「赤髪の白雪姫」の白雪、「甘々と稲妻」の飯田小鳥ちゃん のような声のイメージだったので、今回の硝子の声を聴いて感動した。その台詞ひとつひとつの表現にグッときた。


私も小学生時代、同じクラスに補聴器を着けている男の子がいた。
だから、話し方や動き、表情の移り変わりが正確でリアルだったことが分かる。



いたずら心でからかったり、
ただ単に好奇心、興味本位で質問したり。

小学生ならではのあの空気というのは、大人になって様々なモラルを知った今の自分からすればとんでもなく非常識で、怒鳴り込みたいところだった。

そして、今の自分の職業もあってか、クラス担任の態度も気になった。高圧的で、問題をまやかしている姿に苛つきを覚えた。

(原作マンガではもっとイラつく描写をしていたので映画の方がまだマシだった)


しかし、そこがリアルで良かったのだ。

小学生のころの"正義か悪か"という2択しかなかった世界で、救ってあげられなかった彼・彼女達の姿を描いてくれたからこそ、高校生編が生きてくる。



高校生になった彼らは本当に複雑な心の動きをしていて、とても繊細に扱ってやらないといつ割れるか分からないほどだった。

でも決して重すぎず、温かい光や景色に包まれているのが印象的で、これぞ京アニ!という背景や画全体に心奪われていた。

小学生時代に何だよコイツと思うような人物も、高校生になり、

「あぁ、あの時はこういう思いだったのか」「この人は根っこからこういう人間なのか」

と、物語の進みと共に、ものの見方が変わる経験を私もした。

そして特に、女子の集まりというのはとかくややこしいが

ああ、こういう人もいるよね。
こんなふうに大人になったんだね。


と感じるキャラクターの育て方をしていた。

孤立していた将也をわざとらしいくらいの「親友」として手を伸ばし、顔を上げて生きることを手助けした永束(cv.小野賢章)は本当にイイヤツだし、

"嫌いなら嫌いでそのまま通していいんだ。"
見方を変えて最後には少しだけ歩み寄れた植野(cv.金子有希)に私は感動した。



そしてなによりも、将也のリアルさを丁寧に表現した自由くんのことを私は今、心から尊敬している。
いじめっ子というか、やんちゃで好奇心旺盛な将也(cv.松岡茉優)との対比が、それまでの心の傷を描いているようで本当に胸が苦しくなった。


また、主人公達を取り巻く家族たちも素敵なキャラクターばかり。

将也の母親はどこまで行っても将也の味方であり続けることが滲み出ていて、将也が目を覚ますまでの間の様子に心が傷んだ。

硝子の母親は、無表情で何かを頑なに拒絶しているかのような冷たさを感じていたけど、その裏側には必死で硝子と硝子の妹である結弦(cv.悠木碧)を守ろうとしていたのだと最後に分かった。


結弦と祖母・いと とのやりとりも感じる部分が大きかったのだが、それはまたの機会に話そうと思う。


この作品に出てくる人物達すべてが「善」と呼べないかもしれないけれど、根っこの部分はきっと「善」なんだと思えた。自分の生き方に真っ直ぐ向き合う彼らに私は感動した。





手話に関しては、専門学生時代に1年間かじっていた事もあり、なんとなく台詞が削られた場面も内容を理解することが出来た。

後半に進むにつれ、孤独や死を扱えば扱うほど胸にぐさぐさと刺さるものがあって、涙をこらえるのに必死だった。たぶん隣の人は私の嗚咽がうるさかっただろう。ごめんなさい。


なんで最期を描こうとするとき、直前をあんなにも色鮮やかに美しくするんだろうなぁ……胸が痛くて仕方なかったよ……(褒めています)



誰しもが経験する、人との衝突、自分との衝突。

本当は自分の心の奥底にしまい込んで、
もう2度とその蓋が開かないように
きつく鍵をかけているかもしれないけれど、

この映画を見ているときだけは
そっと開けてしまいそうな気がする。

私も気がつけば開けていた。


将也と硝子と一緒に向き合える気がした。
そして、希望や勇気をもらえた。
学生時代に見ていたらきっと人生観が変わっていたと思う。

大人になった今みても胸にこんなにも響いているのだから。





取り留めもなく思いつくままに書いてしまって申し訳なかったです。

温かく、そして優しく動いている彼らを見れば見るほど私はその裏側を想像してしまって………

なんだか重たい作品のようになってしまっているかもしれないけれど、決してそんなことは無いんです。

作品全体は柔らかい優しさと儚さで包まれています。
とりいそぎこの湧いてくる思いを言葉に残したかったのです。





これから何度かまた見に行きたい作品です。

「聲の形」
(映画『聲の形』公式サイト)

この作品に出会えて良かったです。